2002年1月21日

厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課 
「遺伝子組み換え食品等の安全性審査の手続きを経た旨の公表」担当

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン事務局

「遺伝子組み換え食品等の安全性審査の手続きを経た旨の公表」について

 2001年12月17日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品衛生バイオテクノロジー部会において、安全性審査手続きを経た旨公表された件につき、傍聴した感想も含め、以下のように意見を述べます。

(結論)Btトウモロコシ(日本モンサント)、α−アミラーゼ(ノボザイムズジャパン)、プルナラーゼ(ノボザイムズジャパン)について、食品としての安全性に問題ないことについては、疑問であり、審議のやり直しを求める。

(理由)
1、Btトウモロコシ(MON863系統 デント種)について
 MON863系統はこれまで認可されたBt作物と異なり、この遺伝子Cry3Bb1が作る殺虫蛋白質は、いわゆる根きり虫など土壌昆虫の幼虫を殺す目的で開発されたもので、環境への影響はよりいっそう深刻になると考えられる。こうした懸念からアメリカでもまだ認可されていないものであり、安全審査会はアメリカでも昨年12月中には認可されるとの見こみから一足早く承認した。正式に認可されれば日本が世界で最初に認可することになるというものである。また、アメリカでの栽培もまだ未認可で、今年4月頃には認可される見とおし、との意見が付されており、今回の認可がアメリカにおける今年の作付を予想し、未認可トウモロコシの輸入問題発生を事前に押さえようという極めて政治的な色彩の濃い認可といえる。

 また、害虫抵抗性MON863系統の目的遺伝子は鞘翅目昆虫(コガネムシなど甲虫類の幼虫)を殺すBt遺伝子(Cry3Bb1)だが、その他に選択マーカー遺伝子に大腸菌由来の抗生物質カナマイシン耐性遺伝子nptIIが使われている。その結果、MON863トウモロコシには、この二つの遺伝子カセットが発現可能な完全な形で入っており、どちらの遺伝子もトウモロコシの細胞中で発現されている。 Cry3Bb1蛋白質は70ppmとかなり高い発現量だが、nptII蛋白質は0.076ppmの検出限界以下であった。検出限界ではあっても、これを含まない非組換え体細胞は殺すから、組換え体が選択できたのである。

 この安全審査では、上にあげた問題、即ち抗生物質耐性遺伝子が、口腔内や腸内の細菌と組換えを起こし耐性菌になる危険性については全く無視している。

(以上名古屋大学 河田昌東氏による)

  部会では、人口腸液の中でトリプシン耐性コアたんぱく質が完全に分解されないという質問がでたことに対して寺尾委員は、「Btトウモロコシでは一般的であり、通常胃液で分解されるので問題はない」と回答された。また、アレルギー性についても「アミノ酸配列が数世代安定して存在するので特に問題がない」とされた。Btたんぱく質は加熱によって免疫反応性が99%以上失われるが、100%ではないことは問題にされなかった。Btトウモロコシは、今までに5品目が承認されており、「特に問題にする必要はない」とされたが、本当に食品の安全性は守ることができるのであろうか、この点についての、疑問をあわせて提示する。

2,プルラナーゼとαアミラーゼについて
食品添加物として認可されたプルラナーゼ(SP962)は澱粉中の水に溶けにくい成分を加水分解し、ブドウ糖やアルコール製造過程で効率を上げるために添加される酵素である。宿主もプルラナーゼ遺伝子のドナーも同じ枯草菌の仲間だが種がことなる。プルラナーゼ遺伝子導入時に使ったプラスミドには、三種類の抗生物質、クロランフェニコール、アンピシリン、ネオマイシンに耐性の遺伝子があったが、大腸菌由来の抗生物質クロランフェニコール耐性遺伝子のみが一緒に宿主染色体に入った。しかし、この遺伝子もその後何らかの操作で「除去」され、最終的にこの組換え体には抗生物質耐性遺伝子はない。

 もう一つ認可された食品添加物α―アミラーゼ(SP961)も澱粉を分解可溶化し、オリゴ糖などを作る酵素である。耐熱菌のバチルス・ステアロサーモフィルスのα‐アミラーゼ遺伝子を宿主の枯草菌に挿入した。しかし、こちらには抗生物質カナマイシン耐性遺伝子が同居している。

 このように、抗生物質耐性遺伝子に関しては、除去可能なものは除去するが、難しいものはそのまま、という便宜主義が横行しているのであり、安全審査においてもそれを容認していることが、いつまでも問題を解決できない原因である。

 これら食品添加物は、培養した菌体から分離精製されてからいずれも澱粉加工工程で使われ、組換え体の菌自体が食用になることはない。しかし、遺伝子組換えによって宿主の他の遺伝子に影響を与え毒性のある低分子の不純物は作られていないか、精製工程で除去されているかどうか等が問題である。こうした配慮を無視した例がトリプトファン事件で
ある。

 安全審査では組換え体の中で挿入された遺伝子が発現され、作られる蛋白質に毒性やアレルギー性がないかどうかだけが問題とされる。勿論それは大切である。しかし、本質的な問題は別のところにある。それは、組換え体細胞のDNAが体内に生息する細菌などと遺伝子のやり取りをし、口腔内や腸内の常在細菌自体が抗生物質耐性になる危険があるということである。遺伝子の水平伝達と呼ばれる「種の壁をこえた遺伝子伝達」は、専門的には必ず起こりうると考えられ、WHOなども出来るだけ早く技術開発をして抗生物質耐性遺伝子の利用から手を引くように勧告している。さもなければ、病気になっても抗生物質が効かない、という事態が起こるからである。

(以上名古屋大学 河田昌東氏による)

 部会では、プルナラーゼは多糖のプルランを加水分解し、デキストリン(増粘剤)を生成させるのに用いる酵素で、生産性の向上を目的としている。ここで質問されたのは、「マーカー遺伝子として抗生物質耐性遺伝子が3種類入っていること、特に新しいたんぱく質の生成による影響」だった。その質問に対して寺尾委員は、「生産過程では抗生物質耐性遺伝子は入っているが、組み換え体から精製されプルラナーゼだけを取り出す組み換え体利用であり、組み換え体そのものを直接摂取するものではなく何の問題もない」と回答された。ここではなぜ3種類の抗生物質耐性遺伝子を挿入する必要があるのか、追求されなかった。また抗生物質耐性遺伝子によって新に作り出されたたんぱく質については何も論議されなかった。挿入遺伝子のなかにBt由来のcryVAがあったが、それがなぜ挿入されているのかも問題にされなかった。

 最後にαアミラーゼについて審議された。αアミラーゼは、澱粉やグリコーゲンの分解に用いる酵素であり、以前から使用されている。「このノボザイムズジャパンの酵素はすでに3種類認可されており、なぜ同じ会社から新たに申請されるのか」という質問が出た。それに対して、厚生労働省の三木氏は、「宿主が異なるのではないか、また食品によって使い分けをしているのではないか」とあいまいに答えていた。寺尾委員からは、「生産性の上がる分野が違うのではないか、よく分からないが組み換え体利用であり、組み換え体そのものを摂取するのではないので問題はない」との回答があった。他の委員からは、「自然界にはいろいろなアミラーゼがある、もともとの生産性が悪いのでこの宿主を持ってきたのではないか」といった意見が出たが、きちんと調べて審議しようとする姿勢はまったく見られなかった。そしてこれについても特に問題がないとして承認された。

 今回の審査対象の食品はすでに同種のものが安全確認を終えて、市販されている。今まで何の問題もないとして承認されており、今回も由とするといった姿勢がこの3件の申請に共通している。この部会では、寺尾委員がそれぞれの食品の調査会報告を行い、それを受け10名の委員(当日出席は8名)により審議された。また医薬局食品保健部の担当官が資料説明や補足を行ない、結論を出していた。1件あたりの審議時間は約15分ほどであった。審議が尽くされているとはいえない。

 私たち市民に対して、健康や安全に対して責任があるという自覚が欠如している。ずさんな審査で遺伝子組み換え食品が次々と承認され、私たちが食べさせられることになる。 審議のやり直しを求める。また、その際には、この問題に詳しい、名古屋大学の河田東をぜひ招聘されることをあわせて要望する。

以上

東京都目黒区目黒本町1−10−16
日本消費者連盟内遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン事務局
代表 天笠 啓祐
名和 雪子
小野南海子
古賀 真子
電話03(5794)6861
FAX03(3715)9378

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