GM大豆を食べたラットの子に重大な影響が!!
イリーナ・エルマコヴァ博士全国講演会

衝撃的な動物実験結果

 遺伝子組み換え大豆を食べたラットの子どもが多く死んだ。この衝撃的な動物実験結果を発表した、ロシアの科学者・イリーナ・エルマコヴァさんが、7月初め来日した。今年1月に次ぐ2度目の来日である。私たちは彼女が最初に来日した際、東京大学で研究成果を発表したことを報告が終わった後に知った。その後連絡がとれ、離日する前日に何人かのメンバーが彼女と会った。

 その時聞いた内容が衝撃的だったことと、東大では少人数しか聞いていないことを知り、再度の来日を要請した。私たちとしては、どのような実験だったのか、その結果はどんなものだったのか、を詳しく知りたい、というだけの目的だった。ところが、来日が決まると、全国各地から彼女を呼びたいという声が起き、ついに全国6か所(福岡、大阪、徳島、東京、つくば、札幌)での講演となった。講演は、発表された内容に追加データが加わり、私たちが当初予想していた以上に、さまざまな視点から実験を行っており、かつ内容も豊かだった。

 その分、モンサント社など推進側の反撃も大きかった。モンサント社などのバイテク企業によって運営されているバイテク情報普及会が、マスコミなどを集めて講演会をもつなど、イリーナさんが行くところを先回りして、批判を行った。そして実験の方法などで、イリーナ・エルマコヴァさんが押さえ損なった細かい点を衝いて、「いい加減な実験」というレッテルを貼りつづけた。しかし、この実験がもたらした成果は、そのようなレッテル貼りではけっして色あせることはない、遺伝子組み換え食品の安全性に重要な問題を提起したといえる。

 イリーナ・エルマコヴァさんは、1952年にモスクワで生まれ、1977年にモスクワ大学を卒業した生物学者である。1983年よりロシア科学アカデミー高次神経機能・神経生理学研究所で研究生活を送ってきた。すでに105の論文を発表しており、中心的なテーマとして取り組んできたのが、神経組織や培養細胞の移植がもたらす影響である。とくに行動に及ぼす影響に関する研究が多い。化学物質が行動に及ぼす影響についても調査している。

遺伝子組み換え大豆がもたらす影響を調べようと思った背景には、このような、これまでの研究活動が背景にある。今回のGM大豆で行った動物実験の中にも、行動に及ぼす影響が調査されている。


実験の内容

 イリーナ・エルマコヴァさんが行った動物実験の結果は主に次のようなものだった。
 実験はラットを4つの集団に分けて行った。1つ目は対照群として設定した大豆を含まない通常の飼料のみを与えた集団、2つ目は通常の飼料にGM大豆を加えて与えた集団、3つ目は通常の飼料にGM大豆から抽出したタンパク質を加えて与えた集団、4つ目は通常の大豆に在来大豆を加えて与えた集団で、いずれも加熱したものである。
GM大豆を食べたラットは攻撃性を増した
 1つの実験では、雌ラットへの影響を見た。この場合、4つの集団の間では、不妊の割合も、1匹が産んだ子どもの数にもそれほど差は出なかったものの、GM大豆を与えた集団で「攻撃性」が増した。もう1つの実験では、雄ラットへの影響を見ている。この場合もGM大豆を与えた集団で「攻撃性」が増すという結果を得た。その他にも、雄ラットの精巣が正常なピンク色ではなく、青みかがるという異常が観察された。

GM大豆を食べたラットの子に異常な死亡率
 もっとも注目される結果となったのが、雌ラットに飼料を与え、子ラットへの影響を見た実験だった。実験は4回行ったものの、最後の1回は、対照群として設定した飼料にGM大豆が入っていたことから有意差が出なかったため除外して、3回の実験結果でまとめられた。この実験の場合、もっとも重要なポイントは、母ラットに交尾する前から飼料を与えたことである。その後、健康な雄と交尾させ、子ラットへの影響を見た。その結果、GM大豆を投与した母ラットから生まれた子ラットは、51.6%と高い死亡率だった。対照群の通常の飼料のみを与えた母ラットから生まれた子ラットの場合、死亡率は8.1%だった。通常の飼料にGM大豆から抽出したタンパク質を加えて与えた母ラットから生まれた子ラットの場合、死亡率は15.1%だった。通常の大豆に在来大豆を加えて与えた母ラットから生まれた子ラットの場合、死亡率は10%だった。

GM大豆を食べたラットの子は低体重児
 しかも生き残った子ラットには低体重児が多かった。2週目での10〜20gしかない小さな子ラットの数は、対照群の通常の飼料のみを与えた母ラットから生まれた子ラットでは6%であったのに対して、GM大豆を食べた母ラットから生まれた子ラットでは36%もいた。
 生まれてから3週間後の子ラットの臓器の重量を分析したところ、GM大豆を食べた母ラットから生まれた子ラットは、脳以外すべて軽かった。

異常の原因は?

 イリーナ・エルマコヴァさんは、このような実験結果をもたらした原因として、次の3点をあげた。
1つめは、遺伝子組み換え技術そのものがもたらす影響で、挿入遺伝子が生殖細胞などに侵入して引き起こしたことによるもの。
2つめは、GM大豆に蓄積した除草剤ラウンドアップによる影響。
3つめは、遺伝子組み換え技術によって遺伝子が突然変異を起こした結果による影響。
 遺伝子組み換え技術は、細菌のプラスミドを用いて行うところに基本的な問題点があり、今後、次の問題を引き起こす可能性がある、と指摘して締めくくった。それは癌、不妊、アレルギー、新生児への影響である。

 イリーナ・エルマコヴァさんが、この実験に取り組んだ理由として「毎日食べる食品であるにもかかわらず、このような子どもへの影響を見る実験が行われていないのはおかしい」と述べていた。そこには女性として、また母親としての感性があった。彼女は最近、孫が生まれたばかりである。
 この実験に対して、推進派から繰り返し批判があった。たしかに実験自体まだ最初のステップで試行錯誤のところがあり、緻密さにかける点があったことは否定できない。しかし、同じ条件で4つの集団にそれぞれの飼料を与え、同じ条件で飼育したところ、GM大豆を与えた母ラットの子どもの死亡率が高く、低体重児が多かったという結果が出たのである。

イリーナさんに日本での印象を尋ねたところ「どこへ行っても新聞記者が同じ質問をする」というものだった。各地での講演の際、くり返しイリーナさんが言っていたように、さらに多くの人が同じ実験を行ってほしいし、行う必要があると思うのだが。

天笠啓祐

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