名古屋議定書に関するパブコメ

2010年名古屋で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議」で採択された名古屋議定書に関して、2013年12月27日に「名古屋議定書に係る国内措置のあり方検討会報告書(案)」が公表され、意見募集が行なわれました(2014年1月24日締切り)。

報告書(案)は、本来の目的である遺伝資源の保護や生物多様性を守る姿勢が弱く、全体的に企業や産業界の利益を優先する考え方が強く反映されていると思われる内容でした。

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは以下のような意見を提出しました。※(  )内は報告書(案)の頁を表します。

 

1、対象とする遺伝資源の発効時期について(10頁18~22行目)
対象とする遺伝資源の発効時期は、議定書発効後のものにするということがCBD-COP10で合意されたが、この報告書案ではさらに、「日本の遵守措置が実施された後」で、「他の締約国でABS法令等が実施された後」で、「当該他の締約国において取得された遺伝子資源に限る」としてする、条件が加わっている。COP10の合意に基づき、「議定書発効後」とすべきである。

2、派生物の扱いについて(11頁11~28行目)
遺伝資源からの派生物について、その派生物の定義や範囲が分かり難いため明確にするとともにこと。また、派生物や派生物を改変したものは明確にMAT(利益の配分で相互に合意する条件)の対象とすべきである。

3、緊急性を有する病原体の扱いについて(11頁38行目~12頁10行目)
病原体については、緊急事態には遵守措置の対象から外すことも必要だが、それが抜け道になる可能性もあるので、早急な入手と引き替えに(MATの設定は後日となっても)利益配分をきちんと実施すべきである。また、病原体そのものは遵守措置の対象とすべきであり、手続きも簡略化すべきではない。

4、コモディティ(一般の市場で流通している商品)の扱いについて(12頁30行目~13頁5行目)
コモディティにおいては、販売者と購入者が互いに納得した価格により販売や購入がされているため、種苗や薬用植物について育種や製薬のための研究開発は遵守措置の対象から除外すべきだとしている(12頁35行目~37行目)が、現状では、多国籍企業のような強者が買いたたくなど、販売者と購入者が互いに納得した価格により販売や購入がされていないケースが広がっており、この前提が崩れている。また研究開発(12頁37行目~13頁1行目)も商品化が前提になっているケースがほとんどであり、遵守措置の対象から除外すべきではない。また、コモディティの範囲があいまいであるため、原則として全体を遵守措置の対象としたうえで、どれを除外するか品目を慎重に選んでいくことが必要である。

5、非商業目的の学術研究について(13頁38行目~14頁19行目)
現在は、非商業目的の学術研究といってもであっても、特許取得を行うケースが増えている。そのため特許申請をした時点で非商業目的ではないなくなることを明確にすべきである。また、特許取得にはMATが設定されていることが条件となることを明記すべきである。

6、カルチャーコレクション等が所有する遺伝資源の扱い(14頁27~38行目)
微生物における基準株や検定株も同様で、それらが特許申請をされた時点で遵守対象になることを明確にすべきである。

7、伝統的知識の扱いについて(15頁8~11行目)
伝統的知識に関しては、条約や議定書で定義されておらず、議定書の規定の範囲内でとどまらない可能性もあるため、その範囲内に限定すべきではない。

8、農作物について(16頁8~14行目)
農作物が対象外として扱われているが、遵守の対象とすべきである。

9、モニタリングについて(16頁~19頁)
遵守がきちんと行われているかどうかは、販売承認や商業化など、結果が出てから行うとしているが、結果からでは途中であいまい化されたり、不明になる可能性もあるため、トレーサビリティを義務付けるべきである。その不正監視の対象に特許などの知的所有権を含めるべきである。またMATの内容や履行に関しては、不正がないよう公開を原則とすべきである。学術研究に関しても、商業化を目指したり特許化を目指すものに関しては、同様の措置を取るべきである。

10、他のものと掛け合わせを行った遺伝資源の監視について(20頁6~16行目)
他のものと掛け合わせを行った遺伝資源に関しては、引き継がれた形質の割合よりも、引き継がれた形質の重要度を重視すべきだとしているが、重要度は変化するため、絶え間なく見直す必要があることを明記すべきである。

11、遵守義務の不履行などについて(22頁18行目~23頁18行目)
不履行や違反に関しては、名前の公開、罰金はもちろん、遺伝子資源利用ができなくなるなどの罰則を設定する必要がある。

12、普及啓発について(26頁4~17頁)
企業や研究者などはもとより、誰でもが遺伝資源を扱う関係者になり得ることから、一般の市民への普及啓発を行うことが必要である。とくに一般消費者に向けた普及啓発を行うことによって正しい消費行動を普及啓発することは、利用者(企業)の不正使用を抑制する効果があると考えられる。

以上